支部公開保育終わる。 幼児教育施設はローカリティ醸成の拠点。

■模倣・反復から挑戦・探究へ
駆け足で行く秋と並走するように、公開保育研修会が開催されました。その歴史は古く、コロナの間こそ休止となりましたが、発会当初からはじまり、支部制度ができてからは毎年4支部を巡回して、このたび通算150回(近畿支部)を迎えました。これまでほとんど全ての研修会に出講してきた私にとっても、感慨深いものがあります。
茨城県、長野県、山口県、大阪府と今年巡った4園も各地独自のローカル色に富んだ公開保育となりました。地域の真ん中にいると見えないが、外部から見ることで新しさが発見されることがあります。日課然り、音楽発表然りです。
「主体性をはぐくむ活動」に取り組む実践もありました。星座で有名な地元らしく、子どもたちが星座づくりをして楽しんだり、また音読読本を紙芝居に仕立て直し、発表の場面を作ったり、総幼研実技にとどまらない創意工夫が見られました。いずれも3人から5人程度のグループに分かれて、子どもたちどうしが「話し合い」「形や色、文章を楽しみ」「(仲間に)発表する」経験の広がりが窺えました。
そういった先取的な取り組みの土台には、当然のことながら日々くり返される日課があります。日課ではぐくまれた身体感覚や五感の豊かさがベースとなって様々な活動へと広がっていきます。あそびの4要素にあるように、日々の「模倣」や「反復」があって、そこから「挑戦」「探究」へと接続していきます。地域や園は違っても、ここには総幼研共通の「黄金法則」があるのです。

■地域資本をどう活性化するか
話は変わります。いま、日本の地方は人口減少と共に著しく疲弊する状況にあります。人も経済も情報も、東京への一極集中が進み、地元からは若者や子どもたちの姿が消えていきます。幼児教育の施設であれば、変化の実態を感じないわけにはいかないでしょう。
園長会に出向くと、そういった声に触れることも少なくありませんが、今回4地域を(過去さかのぼれば150の地域を)巡って思ったことは、まだまだ地方には豊かなローカリティがあり、幼児教育施設はその拠り所であるという実感でした。
ローカリティとは、地域色あるいは土地柄を意味します。地元意識や地元愛といってもいいでしょう。その土地に生まれ、生きる人々にとって唯一無二の場所や経験を指すのですが、それは地元出身者だけに限定されるものではありません。外部の人々と分かち合われ、他のローカルをはげまし支え、この国全体の文化の多様性や生き方の可能性をひらくものであるはずです。
園とは、いうまでもなく地元に生まれた子どもたちにとってローカリティの原点となる場所です。そして子育てを通して、親子や家族が成長の経験を共有できる稀有な場所でもあります。経済数値のように統計化はできないが、そこではぐくまれるプライドや愛着、ネットワークや規範意識はかけがえのない「地域(社会)資本」となるもので、これだけは決して東京に劣るわけがないのです。それを幼児教育を通して、どう地域に活性化させ、希望や展望を描き出せるのか、私たちのもうひとつの役割ではないでしょうか。
ある園長会で、園児減少に直面する園長先生がこうおっしゃっていました。
「大変だが、総幼研は素晴らしい教育だから、私はこれを信じて、園をやっていく」
総幼研40周年。節目の年の公開保育は、改めて各地のローカリティの可能性を感じさせてくれるものでした。

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