■今の幼児はα世代の中心
α(アルファ)世代ということばをご存じでしょうか。1990年代後半以降に生まれた若者がZ世代と呼ばれるのに対し、α世代は2010年代以降に生まれた子どもたちをいうそうです。まさにいま、幼児期を生きる子どもたちの世代であり、世界では約20億人に達するといわれるボリュームゾーンです。彼らの共通項は、AIネイティブであること。この世代が、今後の社会や価値観を大きく変えていくのではないか、と注目されています。
年初の全国紙にはその一年を展望するような企画が載りますが、今年1月5日付の日本経済新聞トップに「α世代AI時代、体こそ資本」という記事が目を惹きました。AIが知的作業を急速に代替していく時代において、人間の価値はむしろ、より根源的な「身体」「感覚」「経験」に宿るという内容でした。幼児教育にたずさわる私たちにとって、この指摘は極めて本質的であり、総幼研が長年重視してきた方向性とも深く響き合うものだと同意したのでした。
知識や技能は、これからますます簡単に手に入る時代になります。しかし、その多くはスクリーン上の二次元的な情報であり、身体をともなわない疑似的な経験にとどまりがちです。だからこそ、子どもたちが実際に世界と出会い、試し、感じ、身体を通して理解していく経験が、人間として欠かせない基礎基本になるのではないでしょうか。知識や情報に支配されない自立した心身の生成。総幼研が実践の中でたいせつにしてきたのも、まさにその点であると確信しています。

■身体と感覚を通して世界を生きる主体
総幼研の保育原理である「動き・ことば・リズム」は、身体と感覚の土台を育て、子どもが自分の身体を通して世界と関係を結ぶ力を養う原点です。園生活の中で、他者と応答し、試行錯誤を重ね、時に失敗しながら、自らの身体感覚で世界を捉え直していく。日課でいえば、仲間と共に声を響かせ、互いを思い、支え、重ねていくのです。その時にはぐくまれていく身体感覚とは運動能力にとどまらず、他者や環境との関係の中で刻まれていきます。その具体の積み重ねが、やがて「わかる」「できる」という実在感を生み、思考やことばの根を支える土台となっていくのだと思います。
こうした経験は、どれほどAI技術が進歩しても容易に代替されるものではありません。むしろAI時代だからこそ、人間の根源的な力として一層重要になると考えるべきでしょう。
AIは今後、社会のインフラとして不可欠な存在となり、学びのかたちも大きく変容していくでしょう。その全体像を予測することはむずかしいですが、だからこそ幼児期において私たちが担うべき役割は明確です。子どもを「便利な道具の使い手」に育てることではなく、「身体と感覚を通して世界を生きる主体」に育てること。その基盤を築く最初の時期が幼児期であり、総幼研の実践はその核心を担っていると考えます。
動き・ことば・リズム。そして、運動、ことば、音楽の日課。主体的で対話的な探究。日々の園生活の積み重ねこそが、α世代の子どもたちの未来を支える力になります。AI時代を生きるからこそ、身体を通して世界と出会う経験を。総幼研の歩みと実践が、これからの子どもたちの確かな糧となることを、心より確信しております。





