小1にもiPad支給。ICT以上にたいせつなこと。

このたび全国の小中学校全てに「ひとり1台」のタブレット型端末を支給すると、政府の発表がありました。高速・大容量の通信インフラ整備も並行しますが、いよいよIT人材の育成を目指した国家戦略が始まるとメディアも持ち上げています。小学5年から中学校は2022年度までに、小学1年から4年までは2024年度までに配備を終える予定だそうで、幼稚園卒業まもなく子どもたちがipadを自在に操るという時代が目前に迫っているのです。授業は劇的にかわるだろうし、子どもたちのITスキル、コミュニケーションのあり方はいま以上に進展していきます。

それは結構なことなのですが、少々心配なのは、それに急かされるように幼児教育のICT化が加速して、大事なものがおろそかにされるのではないかという点です。幼少期の子どもにとってまず必要な体験は、からだで感じるような体験を、環境の中にしっかり準備しておくことです。子どもはいろいろなことを五感で味わいながら、物事の思考回路を芽生えさせていく。それこそ幼少期にこそやらなければいけないことであって、プログラミング教育の目的は、問題解決型の思考力を育てることであって、幼い時からデジタル機器に慣らせばよいということではないのです。米国ボストンにGAFAのITエリートの子弟が通う人気の私立小学校がありますが(ウォルドルフ・スクール)、そこでは子どもたちにデジタル機器に触れさせるのでなく、小学生の時期にこそ五感を用いた身体活動に重点をおいているそうです。その時期にしかできない身体経験をいかに与えるかが優先事項であり、それは「IT人材の育成」という目的に照らしても変わることはないはずです。
これから日本の教育現場でダイナミックな変容がはじまるとすると、幼児教育の面でも、ICT化の何がプラス面で、何がマイナス面なのかは、私たちはきちんと観察しなければならないと思うのです。

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