総幼研の教育活動を、脳科学で読み説く

(社)国際知的財産研究機構・主任研究員の柳澤弘樹先生による研究報告

瞑想ありとなしの違い
瞑想によって脳は活性化する
集中力が持続する
声とリズムで流れをつくる

瞑想ありとなしの違い

今回の実験では、朝、体育ローテーションを行った後の日課活動中の脳の活性化状態を測定しました。その結果は、総幼研の日課活動の充実度を見たといっても差し支えありません。

下記の図は試験的調査としてパドマ幼稚園で行った日課活動中の前頭前野の活性化状態の全体的な要約です。主に集中していると、右脳と左脳の額のあたりが赤くなってきます。日課活動前の前頭前野では右脳も左脳もあまり赤くなっているところは見られませんが、日課活動中の頭を見ると、前頭葉の前の前頭極といわれている部分がとても元気に動いていて、集中している状態が見えました。今回の目的は被験者、子どもの数を増やし、篠原実験で得られたデータの信憑性をあげることです。

今回の実験は、総幼研教育の根幹ともいえる日課活動と、その導入活動でもある瞑想との関連を中心に、新たな検証を試みました。運動後に瞑想をすることで集中力が高まるのではないかと仮説をたてて実験を行い、運動後の瞑想の有無による違いを明らかにすることが目的です。子どもたちの身体的自由度を拘束しないように、ポータビリティに優れたNIRO-100を用い、活動が高かった額の部分にプローブ(電極)をつけて測定をしました。

瞑想スタート、瞑想終了、日付・名前、口の体操、リズム・パターン、カードあそび、歌、ソルフェージュ、音読、瞑想など、一連の活動を断続的に測定しました。今回は、集中しているときに活動が向上する前頭前野ですので、この部位の変化が子どもたちの集中力を表しているといえます。

下記の図は実験の流れです。実験1日目は、安静時の子どもたちの頭の状態を測定(ベース取得)してから、約25分の体育ローテーションを行い、その後、入室して手を洗ったり、水を飲んだりした後に、特定の子ども1名がNIRO-100を装着します。その後瞑想をして、ここから測定がはじまります。瞑想後は日課活動を20分行いました。1日目、2日目とこのようなプロトコル(手順)で行います。瞑想を行わない実験では、頭にプローブを装着後は、ただ、まったりとダラッと過ごす時間を対比として設けました。

瞑想によって脳は活性化する

下記の図は瞑想ありと瞑想なしの違いを見た結果です。瞑想ありの場合、日課活動をはじめて、中盤から終盤にかけて高く活動が持続されています。全体を見ても、開始直後から右肩上がりです。また右脳に関しても、若干ですが右肩上がりでスタートし、中盤には高い活動が持続されていました。

対して瞑想のない場合、日課活動をはじめて序盤から中盤あたりでゼロに近い値まで一度落ちているときがあります。つまり、瞑想ありの場合のように右肩上がりにはなっていません。右脳に関しても、序盤から一度落ちていっています。例えば、集中力が途切れてくると、眠くなったり、ボーっとしたりすることがありますが、そういう状態の時に、グラフ上で数値の低下が確認されることがあります。したがってこの場合は、保育室にはいるが、日課活動に集中しきれていない状態なのかもしれません。

まとめると、瞑想ありの場合は、右脳も左脳も日課開始より右肩上がりに前頭前野の活性化状態が上がっていくが、瞑想なしの場合は、活動が低下しているところ(日課活動中の赤い矢印で示している部分)があるという結果が得られました。

集中力が持続する

今回のケース以前にも、小学校で同じような実験を行いましたが、やはり、朝、運動あそびで身体を動かした後、すぐに普段の授業に入ろうとすると、熱冷めやらずにそのままクラスが騒がしくなってしまうことがありました。そこでもう一度、静かな時間を入れてはどうか、とアドバイスをしたところ、効果がありました。時を同じくして、今回の実験となったのですが、幼児の場合も予想通り、最後まで集中力が持続するという結果が得られました。

下記の図は、上記のグラフを重ねてみたものです。赤が瞑想ありの場合で、青が瞑想なしの場合です。瞑想ありの場合の方がとても高い活動が見られました。
(※グラフの下に記載しているのは、子どもたちに提示したカードの内容ですが、園ごとに異なっているので正確な対比ではありません。今後、ベテランの先生と他の先生を比較して子どもたちの脳の活動状態の違いをみるのも、おもしろいかもしれません。)

下記の図は、折れ線グラフを積分し、面積を棒グラフにしたもので、瞑想ありと瞑想なしを統計比較してみました。今回は序盤、中盤、終盤にかけて活動が高かったという結果が得られました。

カードあそびの際も、瞑想ありの場合の方が高く集中していたのではないのかと思います(図7)。

また、歌とリズムを行っていた区間や、ソルフェージュも優位差が大きく見られました。瞑想ありの場合の方が大きく活動が増加していました。

声とリズムで流れをつくる

今回の実験では、瞑想の有無によるその後の集中度を比較しました。私たちの脳は、運動によってウォーミングアップをすると、その後のパフォーマンスが向上します。それを、より効果的にするのが瞑想ということができるでしょう。正確には、首から下の末梢器官の活動を抑えることによって、脳がちょうどよい状態に落ち着いてくるということです。

子どもたちの脳は、意思だけではコントロールしきれないことがあります。感情に負けてしまう時、自分の欲求を抑えられない時があるのは、脳をコントロールする力が未熟だからです。これは、決して悪いことではありません。誰もがたどる発達の過程です。そんな脳を上手にコントロールするためのコツは、メリハリをつけてあげることです。

子どもたちを引きつける先生の特徴のひとつに表現の豊かさがあります。笑顔が素敵であったり、声に抑揚をつけたり、大きなジェスチャーは子どもを引きつけますよね。それと同じで、脳を上手にコントロールするためにも、運動と瞑想というメリハリが効果的に働き、その後の集中度が高まるのです。

今回の実験では、瞑想の有無だけを比較しましたが、それ以外にも様々な要素が子どもたちへの働きかけに含まれています。表情、声のトーン、リズムのはやさなどです。そんな中でも、簡単に取り入れられるのが、声の大小やリズムです。声とリズムで子どもたち全体の流れを操作できるように練習すると先生のスキルが伸びていきます。保育力を磨くためにも、その辺りを意識してこれからの日課活動に取り組んでみてください。

 

(社)国際知的財産研究機構 脳機能研究所 主任研究員
柳澤弘樹(やなぎさわ ひろき)先生

●筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了、同大学院博士特別研究員、独)食品総合科学研究所食認知研究部門特別研究員、公財)体力医学研究所研究員を経て、現職。社)国際知的財産研究機構脳機能研究所主任研究員、NPO法人運動保育士会理事、こどもプラス株式会社取締役。
従来までの体育、スポーツを幼児の発育発達に合わせた形で提供し、認知機能の向上、心の発達を脳科学的な 視点で研究を行う。研究テーマは、「身体活動と脳機能」。また、発達障がい児に対する運動の有用性に関する研究も手がける。
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