脳といい感じ。子どもの「地頭」を育む。

先日、埼玉県にある総幼研の幼稚園で、諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀先生とお会いしました。「はげひげ」の脳科学者である先生のお顔を見れば、テレビで見かけた方も多いかもしれません。
この日の目的は、総幼研教育の実際を見ていただいて、脳科学者の立場からご提言をいただくことだったのですが、篠原先生からは「教育効果は高い」とのお言葉をいただきました。しっかりした理念のもと、体育ローテーションや日課活動など、リズム、テンポ、くりかえしの教育実践が、幼児の脳の発育に適切であるという感想もいただきました。じつは、先生の研究の一環として、日課活動中の幼児の脳内測定の可能性を探るというねらいもあったのですが、これも改めて実現できそうです。

篠原先生の著作に「子どもの地頭をよくする方法」という本があります。「地頭」とは「知識や情報量よりも、自分の頭で考える力」をいいますが、子どもの場合、それは「やる気」と「ワーキングメモリ」の二つに大別できるといいます。詳細は本に譲りますが、私が納得したのが、その中の「やる気のメカニズム」。「がんばれ、がんばれ」といくら叱咤しても、幼児の意欲は育たない。「やる気」には脳の奥にある線条体という部位がかかわっており、無意識化した技が関係しているといいます。
例えば、自転車に乗れなかった子どもが、何度かチャレンジしていくうちに、たまにうまく乗れた、その「いい感じ」を積み重ねて、本当に乗れる確率を上げていくといいます。このうまくいった動作や手順には、「いい感じ」というタグが貼られていき、次にチャレンジする時には、無意識だが、これを手掛かりにうまくいった動作や行動の手順が呼び起こされるというのです。やる気の正体とは、この「いい感じ」、つまりいろんな動作にできるだけ「快」のタグをたくさん貼ることだと教わりました。

パドマ幼稚園や総幼研の子どもたちが「いきいき」「パワフル」「元気」と評されるのは、身体的活力もありますが、その「いい感じ」が毎日の活動の中でたくさんタグつけされるからです。もちろんそれは、知識や技能の「快」とは違う。皆の姿勢が整う、声が揃う、息が合うなど、仲間とともにシンクロする、共振する場面があって、はじめて集団の中における「快」を見出すのだと思います。
もちろん、その「快」を育むために大事なことは、ほめること。先生がすかさず、真心をこめてほめることで、やる気は一気に上昇します。ほめて、ほめて、そのうち日々の活動の中で達成感を得て、内発的な動機が育っていくのを待つのです。
パドマ幼稚園の先生は、ほとんど子どもを叱りません。園内には、ほめることばが、感謝のことばがあふれています。子どもがそのような環境の中で、生きることの「快」を会得していくのだと思います。 総幼研教育とは、幼児の「地頭」を育てる教育なのです。

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