新学期はじまる。2学期の目標は、ことばの羅針盤。

本格的に新学期がはじまりました。朝はやくから年中のあいさつ運動の声が園舎に響きます。さわやかな秋の空と涼風、2学期の開幕を肌に感じています。

2学期は、飛躍の季節です。活動も友だち関係も一段と活発になりますが、同時に、それらを通して、どんな心を育てるのか、幼児教育の本質がもっとも問われるのも、この2学期です。

年長のクラスを覗くと、白い壁面に2学期の学年目標が貼り出されていました。
「団結力を高める〜人間関係を深める」

クラス活動はもちろん、運動会や遊戯会など2学期の行事を通して、担任が育みたいものなのでしょう。「団結力」とか「人間関係」といったことばの意味よりも、たいせつにしたいことは、まさに今週から始動したゆたかな園生活の経験の質量です。これはスローガンというよりも、教育が目指すべき高みなのです。

年長の担任たちのノートには、「団結力を高める」ために何を心がけるべきなのか、具体的な目標が掲げられています。
「考えや気持ちをみんなで共有する場を設ける」
「人や物への感謝の心を育み、それをことばにする機会を設ける」
「周りをよく見て、自分で考えて行動する」
「手と姿勢を伸ばしてあいさつする」等々。
 
いったい私たちは人間の理想をどのように考えてきたでしょうか。人間社会の基本としての信頼や感謝、団結や貢献など、人と人の間に生まれる最も尊い営みを、どう幼い子どもたちに教えていくのか。担任は見えないものを、行為とことばという見える姿にして「伝えよう」としているのです。

保障やサービスが行き届き過ぎて、私たちは人間社会のなかに生れ出る関係のゆたかさにいささか鈍感になっていないでしょうか。今日、あなたは誰かのために奉仕をしましたか、何度ありがとうといったでしょうか。「伝える」べきは、知識や情報ではありません。担任と子どもたちの関係から日々生まれる、人間として生きることの理想なのです。

人間の原初たる幼児期にこそ、しっかり心の底に焼き付けておくべきもの。それは、当たり前ではあるが、しばしば見落とされていくものなのかもしれません。それをいかに認識して、いかに伝えていくのか。掲げられた2学期の目標は、見えないものを見ようとする、ことばの羅針盤なのです。

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