「やり方」から「あり方」へ。プロセスを考える。

■ドキュメンテーション注目の”ワケ”
最近「プロセスエコノミー」というビジネス書を読みました。経済が成熟してどれを買っても同じような飽和社会では、完成品あるいはアウトプット(成果物)で稼ぐ経済から、完成にいたる道のりで顧客を集める、新しいプロセスエコノミーが注目されるという内容でした。
ビジネスと教育と同位に語ってはいけませんが、プロセス重視という見方に反応するところがあります。最近、ICTの普及と共にドキュメンテーションについて色々な研修やツールが相次ぐようになりました。保育の質向上には見える化、言語化など、「成果」だけではなく「過程」を重視しながら、新しい価値を取り出していく試みということでしょう。
行事についても同じことがいえます。完成度を評価する前に、果たしてそのプロセスは保護者と共有されているのか、いや先生が過程をイベントの手順ではなく、子どもの発達として捉えられているのか、そういう視点がたいせつです。
パドマ幼稚園でも10月の絵画造形展では、各クラスの制作過程を写真や動画で紹介したり、共同制作の模様をスクリーンで上映したり、様々な取り組みをしました。完成にいたるまでの子どもと素材や描法との出会い、あるいは発見や工夫、挑戦や協同などの模様を「プロセスの開示」として、参観の皆さんに見ていただきました。後日の振り返り会では、日頃の保育、総幼研活動を積み上げてきた賜物として、先生たちも手応えを感じてくれたようでした。

■whatからwhyへ
総幼研教育は、実技の体系が確立されていることが大きな特徴です。「やり方」「進め方」がハンドブックにまとめられており、それは現場の先生方にはとてもわかりやすく大きな拠り所にもなっていることでしょう。誰もが迷うことなく、同じフォームを共有できることは保育の質を底上げする上でも重要であることに違いありません。
一方で率直に申し上げて、「やり方」が優先される余り、保育の価値が先生のスキルに依存される傾向もなきにしもあらずではないでしょうか。課題活動でいえば、教材をうまく扱うことが目的になってしまい、本来のねらいや子どもの育ちにまで先生の意識がいたっているのだろうかと気がかりでもあります。
むろん子どもの発達の過程はひとつの活動や教材で見て取れるものではなく、園活動・園生活全体を通して見出していくものでなくてはなりません。それは総幼研教育の中でというより、自園の保育や生活全体のプロセスの中で、先生のまなざしによって「再発見」「再構築」されていくものでしょう。「何をしているのか(what)」ではなく、「なぜしているのか(why)」という問いかけがあってこそ、プロセスが意味を持つのです。それが写真や動画でドキュメントされていれば、さらに意義あるものとなるに違いありません。
なぜ総幼研なのか、を自園の保育を核に考え直してみる。そこで、「やり方」以上に「あり方」を考えてみる。その物差しは、成果だけではなくプロセスにあります。
これから長いウィズコロナの時代がはじまります。だからこそ園長や先生方のプロセスを見つめる沈着なまなざしが求められると思います。

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