「適切保育」とは何か。質の向上への試行錯誤を。

■「不適切保育」の衝撃
昨年は「不適切保育」ということばに衝撃を受けました。幼児教育施設に対する社会の目は厳しいものがあります。
こういう「事件」が起きると、論調はすぐさま「保育者のオーバーワーク」「人手不足」と転じて、現首相の「異次元の少子化対策」につながるのですが、もちろん職員の配置基準や給料アップは望ましいことながら、それが本質的な解決策となるのかいささか疑問を感じます。いや、保育行政としてはやれるこ
とに限度がありますでしょうし、さらに園種の違いなく各園が幼児教育施設としてあるならば、まず「保育・教育の質」「保育者の質」の向上を目指さなくては、数量の論議にすり替わってしまいそうな気がします。
一方で、掛け声のごとく「質の向上」を唱えても、それは一体何を指すのか、保育者の理解や実行がなくては画餅に終わります。「不適切保育」というなら
ば、教育施設としての「適切保育」は何なのか、そのあるべき姿を各園がきちんと明かしてこそ向上があるはずです。

 

■質向上への試行錯誤
私見ではありますが、いくつか論点を挙げてみました。

【理念、方針の明文化】
パドマ幼稚園では、2年前から保育理念、方針を改訂しました。理念とは園の理想像、方針とはどのような方向性で保育を行うかを明らかにしたものであり、これに加えて、保育目標にあたる「当園が目指す5つの子どもの姿」を明文化しました。5領域や10の姿を当園的にアレンジして、盛り込んだものです。それが保育者はもちろん、ホームページなどで保護者にも共有されている点が重要です。
【カリキュラムの策定】
次にそれを保育現場で実現していくためのカリキュラムが必要となります。パドマ幼稚園ではコロナの間、この改訂をくり返し、現在3版目となっていますが、今では新卒の新任が見ても1年先が見通せる内容となりました。日案や週案を使っている園は多いと思いますが、子どもは週単位で発達するわけではありません。カリキュラムを実施、評価、改良していくことで、保育者の子ども観が定まり、また保育のゆとり(あれもこれもと迷わない)にもつながります。
【保育者の意識の向上】
保育の質の向上とは、保育活動と保育者自身の意識の向上がセットでなくてはなりません。パドマ幼稚園では今年度から毎学期「1on 1」の面談を取り入れており、個人の保育目標に基づき上席者が評価する仕組みを進めています。評価といっても、大半は共感とはげましですが、保育者の強み・弱みが要点化され、自身の意識の改善につながっていくサイクルが生まれています。

他にも保育にかかわる者の当然の責務として研修の参加などがありますが、まずは前提として3つを挙げました。日々忙殺される中で、容易に実現できるものではないかもしれません。しかし、これからも起こりうる保育問題をただ数量の問題に終わらせないためにも、まずは私たち各園から質向上に向けての試行錯誤が必要ではないかと思うのです。

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