総幼研活動の広がりと、主体的な保育者の自立へ。

■リレーを素材に、対話と協働
パドマ幼稚園では、昨年度から「主体的な活動」を取り入れ、試行錯誤が続いています。もちろん毎日の日課やローテーションはそのままですから、保育時間としてはちょっと窮屈にはなったものの、活動に臨む先生たちの様子がだんだんと変わってきたように思います。
さかのぼれば、2年前、コロナの渦中でしたが、私から新しい保育の方向性を伝えたのが最初なのですが(それに並行して、ビジョンやカリキュラムの見直しも進めていたのですが、ここでは割愛します)、やはり職員間にはかなりの抵抗やためらいがあったようです。「型の保育が崩れてしまう」「時間が捻出できない」、中には「いままでやってきたことが否定された気持ち」とか、まぁ、新しく何かを変えようとすると、そんな反発はつきものです。
定期的に指導に来てくださっている大学の先生も交えて、研修を何度も重ね、トライアンドエラーをくり返してきたのですが、その変化の転機が去年の運動会であったように思います。年長児のリレーです。
いままでは、リレーは、先生がチームを指名して、バトンの渡し方を教えて、あとは練習あるのみだったのですが、昨年は、一部の順番を自分たちで選んだり、バトンリレーの方法を動画で学んだり、応援のマナーを話し合ったり、リレーを素材に子どもたちの対話や協働がぐんと進みました。当時の学年主任がこう振り返っています。

「最初は幼稚園児にバトンパスはむずかしすぎると思っていたのですが、何度も話し合いや練習を重ねて、もっと上手になりたい、がんばりたいという気持ちが生まれました。みんなで考える姿は、子どもたちなりの『探究』に近いと思いました」

 

■総幼研活動を幅広く捉える
同じようなことがプリント教材にもいえます。年中のあるクラスの話です。よくある、ドットを線結びするちえのプリントがありました。いつもならささっと仕上げて赤丸をつけて終わりなのですが、担任が工夫し、その後フォローとして、各自大きな紙に自分で好きなところに赤丸シールを貼って、それを線で結ぶ活動へつなげました。印刷してある丸ではなく、自分でつけた丸ですから、その形には何か意味があるはずです。
前の黒板に貼って、発表となったのですが、「ライオン」だったり「先生の顔」だったり、思いがけないアイデアが出され、そこでも話し合いが交わされました。
プリントのハンドブックにもありますが、先行体験にせよ後フォローにせよ、経験をどのように多元化していくか、それによって教材の活用度は飛躍的に変わります。あれだけ多様なプリントには、それだけたくさんの可能性を秘めているとも感じます。
「主体的な活動」だから何か特別な活動があるのではありません。いつもの総幼研の活動を幅広く捉え直し、そこへ主体性の観点を引きあてていく。その見方、感じ方からは、先生の個性やセンスも違って見えます。
2年目に入って、前年の経験をふまえられるようになって少しずつ先生たちの理解も進んできたように感じます。たくさんの外部研修を受けたり、他園の見学に出かけたり、それなりの時間と費用もかけていますが、まず先生たち自身が、主体的な保育者として自立してくれることが何よりたいせつなことなのだと思います。

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