日本ラグビーの強さを支える「品位」とは。

■ラグビー憲章5つの価値
ラグビーW杯が終わりました。日本チームの健闘ぶりに多くの国民が熱狂しました。
ところで、ラグビースピリッツをあらわす5つの価値、「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」が「ラグビー憲章」に定められていることはご存知でしょうか。突き倒すほどのコンタクトプレーでありながら、試合が終われば互いをたたえ合う精神は、ラグビーならではの魅力といえます。しかも、5つのことばの先頭が「情熱」や「結束」でなく、「品位」ではじまることに意外な感覚を覚えます。品位とは「道徳的価値から見た人の性質や人格」をいいますが、スポーツにおける理性や倫理観を重視しているということなのでしょう。
むろん、品位は勉強したからといって必ず身につくものではありません。学歴や年収や地位が高くても品の劣った人はいくらでもいますし、貧しく無学であっても「どこか品がある」と周りからいわれる人もいます。やはり品位とは、多分にその人の生育環境や経験の質に比例するのでしょう。一般に幼児教育の目標に「品位ある子どもを育てる」とはいいません。品を云々するには、幼児期はあまりに早期であって、これからの人生次第だからでしょう。しかし、様々な日課活動を仲間と共に励み、努めることは、「知・情・体」という人間の人格の基礎をつくり上げることであり、「品位の芽」を息吹くものとしてふさわしいと思います。いや、品位はどういう環境で、どういう教育を受けてきたかで決定する、といっても過言ではないでしょう。総幼研教育がそのような「品位の芽」をはぐくむものであってほしいと願います。

■園長のフィロソフィー
また、園の教職員の品位についてはどうでしょうか。社会人としてのマナーや作法については各職場でも指導されていると思いますが、それと人間の品位は別物です。著名な講師からよい話を聞いたからといって、人の性質や人格はそう簡単にはかわらない。もし大人が品位を身につけたいと願うならば、そのための特別な指導というより、普段の職場や同僚集団の中から醸し出される独自のエートスが必要です。卑近な例で恐縮ですが、パドマ幼稚園では「職員心得10か条」がクレドとして職員室に掲示されています。たとえば「パドマ幼稚園職員は社会や幼稚園のルールの鑑となります」「自分と全ての人の時間をたいせつにします」「次世代育成に使命と責任をもって当たります」など、単なる心得ごとで止めず、教職員が備えるべき使命とは何なのかを確認するようにしています。また、随時カンファレンスを行い、子どもにとって最善の保育とは何か、望ましい同僚性や保護者とのコミュニケーションなどについて「対話」をくり返します。新任の先生を対象にした研修では、キャリア10年の先輩から自分の体験に基づいた心得や作法を教えます。子どもにせよ、先生にせよ、「育ってほしい」という思いを、ことばやかかわりにして不断に伝えていくのです。
いずれにせよ品位は一朝一夕に育つものではありません。まさにそれぞれの園の中の伝統の中で培われていくものであって、その中核には、職員集団の、なかんずく園長自身のフィロソフィー、生き方がしっかりと据えられているのです。ベスト8に進出した日本ラグビーの強さは、そうした品位あってこそ雄々しいのです。

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