新型コロナに際し思うこと。園教育の使命と、これから。

■規則正しい時間
コロナ禍が急速に拡大するイタリアでも全ての学校は休校となっていますが、ミラノのある高校の校長先生が生徒に送ったメッセージが評判になっています(共同通信3月7日)。
一部を抜粋しましょう。
「学校は、規則正しく時間を過ごす習慣を作り、礼儀正しく文化的な生活を送ることを学ぶ教育施設です。(中略)君たちにいいたいことがあります。冷静さを保ち、集団のパニックに巻き込まれないこと。予防策を講じつつ、いつもの生活を続けて下さい。せっかくの休みですから、散歩したり、良質な本を読んでください。体調に問題がないなら、家に閉じこもる理由はありません」
メディアは不安や危機感を煽ります。それが増幅器となって市民がパニックに陥り、社会生活や人間関係が荒廃していく。その混乱した様子は現代医学の進歩があるにもかかわらず、14世紀の「デカメロン」と大差ないように見えます。
今回の「緊急事態」対策で多くの園長先生がご苦心されたことと思います。卒園式は、いや入園式は、それにまつわる新年度準備は、と、いまも苦慮を重ねられていることでしょう。私も、休園中にもかかわらず、毎日緊張を強いられました。
確かに「緊急事態」なのですが、別にもうひとつわきまえておくべきことがあると思います。それは、こういう時だからこそふだんの園生活の営みが、地域社会や市民生活にとって大事な心の拠り所になるのであって、この校長先生がいうように「規則正しい時間を過ごす習慣」づくりを忘れてはならないという点です。

■ポスト・コロナの園教育
目に見えない感染症の脅威は、確かにあります。いまは感染3条件を改めながら、慎重に日常を過ごしていくことなのですが、同時に私たちの使命は未来を託す子どもたちの健全な発達の保障であって、その機会を誰も「中止・延期」することはできないはずです。「規則正しい生活」は子どものみならず、親子や家庭、地域社会に対し、安定や平静を担保することにもつながります。原状への回復は早々にはむずかしいでしょう。数々の制約や障壁もあります。しかし、そういう状況にあるからこそ、私たちが目指す「規律ある園生活」が、本来の意味を問われていると考えるのです。
もうひとつ付言しておきたいのは、休校措置の中で各家庭に拡大したオンライン学習についてです。数々の学習アプリが無料で提供されていますが、これは見方をかえればデジタル・イノベーションの社会実験という側面もあり、今後の学び方に新しい地平を与え得るという指摘もあります(日本経済新聞3月10日・柳川範之東京大学教授)。2023年には全ての小学生にもひとり1台IT端末が支給されますから、確かにその影響は計り知れないでしょう。
では、そうした変革期において、独自の幼児教育とは何を、どのようなかたちで提供できるのか。かわるもの、かわらないものの間で、ポスト・コロナの園教育の方向性が注目されていると思うのです。

 

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